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§生物多様性条約と企業の取り組みについて

1.「生物多様性条約」の経緯
  1992年(平成4年)6月3日から14日まで、リオデジャネイロで地球サミット(環境と開発に関する国連会議)
 が開催され「気候変動枠組条約」及び「生物多様性条約」が採択(署名開始)された。日本もこれに署名し、
 1993年5月28日に国連事務総長に受諾書を寄託し締結した。条約第6条に基づき「生物多様性国家戦略」を
 策定する義務が課せられ、1995年(平成7年)10月に生物多様性国家戦略を決定した。その後、第三次生物
 多様性国家戦略の閣議決定(平成19年11月)を経て、生物多様性基本法(平成20年法律第58号)に基づく、
 初めての生物多様性国家戦略となる「生物多様性国家戦略2010」が、平成22年3月16日に閣議決定された。
  生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、2010年10月18日から29日まで、愛知県名古屋市の名古屋
 国際会議場で開催された。(松本環境大臣が議長)この2010年は、国連が定めた「国際生物多様性年」
 でもある。以下に、本条約の3つの目的を示します。(第1条参照)

 (1)生物多様性の保全
    地球上の多用な生物やその生息地の保全、悪影響を及ぼす外来種の導入防止など
 (2)生物多様性の構成要素の持続可能な利用
    生物資源(生態系サービス※)を持続可能であるように利用すること
   (生きものは、医薬品や食料、燃料などの資源として利用されていますが、その資源が過度に
    利用されたり、森林の伐採等により生育地・生息地が破壊されれば、生きものが失われ、
    生物多様性が持続できなくなってしまいます。)
 (3)遺伝資源※の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分
    遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分すること
   (例えば、ある国に生育する植物の遺伝資源を先進国が利用して得た利益が、提供者にも公平に
    配分されるようにする。)

 ※:生態系サービスとは
   人類が生態系から得ている利益。淡水・食料・燃料などの供給サービス、気候・大気成分・
   生物数などの調整サービス、精神的充足やレクリエーション機会の提供などの文化的サービス、
   酸素の生成・土壌形成・栄養や水の循環などの基盤サービスがある。生態系サービスは生物多様性
   によって支えられている。(生態系サービスが無くなれば人類は滅亡する。)
 ※:遺伝資源とは(植物遺伝資源、動物遺伝資源)
   遺伝の機能を備えた生物由来の素材。医薬品・食品・材料・エネルギー・環境など幅広い分野で
   研究・産業に利用される。広義には、遺伝子を持った動植物全般を意味するが、狭義には動植物の
   原種(在来種)の保存に関する遺伝子の意味もある。
   すなわち生物多様性のためには、原種(在来種)が絶滅しないようにする必要がある。

 参考までに、生物多様性条約の目標を以下に示す。
  COP6 「2010年までに生物多様性の損失を阻止し、逆転させること」
  COP8 「締約国は現在の生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる。」
  COP10(愛知目標)「2020年までに生態系が強靱で基礎的なサービスを提供できるよう、
     生物多様性の損失を止めるために、実効的かつ緊急の行動を起こす。」
     「2050年までに、生態系サービスを維持し、健全な地球を維持し全ての人に必要な利益を
     提供しつつ、生物多様性が評価され、保全され、回復され、賢明に利用される。」
  COP11 第11回締約国会議は2012年10月にインド(都市未定)において開催予定。

 その他、詳細は以下の外務省/生物多様性条約のページをご参照ください。
   外務省>外交政策>地球環境>生物多様性>生物多様性条約(生物の多様性に関する条約:CBD)

2.生物多様性保全に対する企業の取組みについて
  おおざっぱにいうと、以下の5つに取組んでいれば、「生物多様性保全」に取組んでいるといえる
 のではないでしょうか。
  1) 生物多様性の重要性の認識
  2) 環境側面の生物多様性的評価
  3) 事業活動(生産活動)で省資源・省エネ・3Rに取組む
  4) 事業活動(製品開発)で省資源・省エネに寄与するものを開発する
  5) 社会貢献活動により生物多様性保全に寄与する

 具体的には、企業は次のようなことを行えばよい。
 (1) まず、生物多様性や自然の恵み(生態系サービス)の重要性を認識する
   これは、Web検索すれば、いろいろな資料が出てきますので、読むだけでもOKと思う。
  (あるいは社内講習会のついでに触れるなど)環境側面調査の際に、意識できるようにする。
   私たちの生活の中で当たり前と思っていることの多くが、生物多様性のたくさんの恵み
  (生態系サービス)の上に成り立っています。食べ物も酸素も生物由来であり、生物多様性の
   危機は人類の滅亡と直結することを理解する。
 (2) 自らの事業活動による生物多様性への影響の把握・分析、及び事業の進め方の改善に努める
   環境側面調査表に生物多様性のチェック欄を設けたり、環境側面評価表【直接影響】の評価項目に
  「生物多様性保全への影響」の項目を入れることでOKかと思います。
 (3) 資源循環型経営を推進する
   自らの事業活動はもとより、商品・サービスのライフサイクルにも着目した省資源、省エネルギー、
   3R(リデュース、リユース、リサイクル)を、継続的に推進する。
 (4) 生物多様性保全に寄与する製品や技術の開発、普及に努める
   製品開発時に地球温暖化防止または、生物多様性の保全に寄与することを認識する。
   (やはり企業は事業活動を通じて生物多様性の保全に寄与するのがよい。)
 (5) 自らの事業活動に関わらない生物多様性問題についても、社会貢献活動として取り組む
   しいていうなら、周辺清掃や事業所見学受入については、社会全体の生物多様性を育む
   意識の向上につながる活動であるため、OKではないでしょうか。
   もう一歩踏み込むなら、周辺清掃ではなく公園や河川などの清掃を行えば直接的な(完全な)
   生物多様性保全になると思います。あるいは植樹などへの出資もOKです。

3.日本経団連:日本経団連生物多様性宣言 (2009-03-17) について
  日本経団連が、企業の立場から生物多様性保全の問題に取り組む決意と行動指針を示した宣言。
 平成21年(2009)3月発表。「自然の恵みに感謝し、自然循環と事業活動との調和を志す」
 「生物多様性の危機に対してグローバルな視点を持ち行動する」など7つの原則からなり、
 15の行動指針が付されている。これに賛同する企業は300社以上となっており、自社の環境方針などに
 引用したりしています。
 ・経団連生物多様性宣言

4.参考になるサイト
 ・環境省/生物多様性 -Biodiversity-
 ・環境省/生物多様性と民間参画
 ・環境省/環境白書/こども環境白書/こども環境白書2011(平成22年版)/どうなる生物多様性
 ・外務省/生物多様性条約のページ


【書籍紹介】
 生物多様性とは何か(岩波新書):井田徹治 著


 クロマグロの大量消費は何が問題なのか?
 人類を養う絶妙な生物ネットワークの破壊が進んでおり、
 生物多様性条約もその歯止めになっていない。
 今なすべきことは何なのか。世界のホットスポットの現状と、
 保全のための新しい仕組みをレポートし、
 人間と自然との関係修復を訴える。



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