§昨今の環境保全活動の根拠(発端)について 更新日 2012/6/30
1992年6月3日〜14日、ブラジルのリオデジャネイロで地球サミット(環境と開発に関する国連会議)
が開催され、人類共通の課題である地球環境の保全と持続可能な開発の実現のための具体的な方策が
話し合われた。テーマは「環境と開発の統合」とされた。
・「環境と開発に関するリオデジャネイロ宣言
(リオ宣言)」の採択
・「持続可能な開発のための人類の行動計画
アジェンダ21」の採択
・「森林に関する原則」の採択
・
「気候変動枠組条約」及び
「生物多様性条約」の採択(署名開始)日本は6/13に署名
⇒昨今の環境保全活動の根拠は、全てここから始まっている!といっても過言ではない。
(1) 環境と開発に関する「リオ宣言」とは?
人類の未来のために必要となる資源を消費し尽くすことなく、地球環境と調和して人類が発展する
ための27個の原則からなる宣言。
地球規模で環境と開発を調整する持続可能な開発の概念が中心
であり、
先進国と途上国のこう平性を確保し、地球環境問題に勘案される「共通だが差異のある責任」
の原則が明確化されている。
(2)「アジェンダ21」とは?
「リオ宣言」を実践するための具体的な行動計画のことで、条約のような拘束力はないが、各国の
政策に落とし込まれる。(大気保全、森林、砂漠化、生物多様性、海洋保護、廃棄物対策などの具体的
問題についてのプログラムを示すとともに、その実施のための資金、技術移転、国際機構、国際法の
在り方等についても規定している。4部構成全40章 英文500ページにも及ぶ。)
第17章に「海洋、閉鎖性及び準閉鎖性海域を含む全ての海域及び沿岸域の保護及びこれらの
生物資源の保護、合理的利用及び開発」がある。
第19章に「有害及び危険な製品の違法な国際的移動の防止を含む、有害化学物質の環境上適正
な管理」がある。
⇒昨今の有害物質規制の強化は、これらの章が根拠となっている。RoHS指令、REACH規則、
POPs規制(PCB等の処理)なども、このプログラムに従って実行されているといってもよい。
備考)POPs条約:日本を含む欧州を中心とした多くの国々は、POPs条約(残留性有機汚染物質に関する
ストックホルム条約)を締結していて、(日本は2002年8月に加入)2025年(平成37年)までに
PCBの使用の廃絶、2028年(平成40年)までに廃液、機器の処理(努力義務)を義務付けている。
(3)「気候変動枠組条約」とは?
大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目的とし、地球温暖化がもたらすさまざまな
悪影響を防止するための国際的な枠組みを定めた条約。簡単に言えば、
地球温暖化防止のため
二酸化炭素(CO2)等の
温室効果ガスの排出規制の枠組みを決めた国際条約。
(本条約には具体的な数値目標などは盛込まれていないため、その後の締約国会議(COP)で
具体化されていくことになる。)
備考)1997年12月1〜10日まで、京都国際会館において気候変動枠組条約第3回締結国会議
(地球温暖化防止京都会議)(COP3)開催/京都議定書が採択された。
直近では、2011年11月28日〜12月11日まで南アフリカ共和国ダーバンにおいて、
気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)/京都議定書第7回締約国会合(CMP7)
等が行われた。さらに、2012年11月〜12月にCOP18/CMP8が、カタールのドーハで
開かれる予定。
・
地球温暖化対策推進法(温対法) 制定(1998年10月9日公布)
京都議定書の採択を受け、わが国の地球温暖化対策の第一歩として、国、地方公共団体、事業者、
国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めた。(地球温暖化防止を目的と
する世界最初の法律)
備考)この法律は、2002、2005、2006、2008と改正を重ねる度に義務が強化され、国だけ
でなく自治体や事業者の責務が強化されている。2008年の改正では、地方自治体区
域内の排出抑制に関する計画が義務付けられ施策が必要となった。
→各自治体は地球温暖化対策条例を整備
・京都府地球温暖化対策条例
2005年(平成17年)12月27日公布、2006年(平成18年)4月1日施行
2010年(平成22年)10月改正、2011年(平成23年)4月1日施行
これにより、特に特定事業者への削減努力の強化が図られている。
備考)最近では多くの自治体において、地球温暖化対策関係の条例が施行されている。
(平成22年調べで、29都道府県が報告制度を規定済です。)
また、多くの自治体で公表制度を取り入れている。これは、各事業者の取り組み姿勢と
その結果を公表することで、いわば衆人環視の状況を作ることを意図している。
(4)「生物多様性条約」とは?
生物の多様性の保全と持続的利用、遺伝子資源からの利益の衡平な分配を目的とする国際条約。
本条約の3つの目的を以下に示します。(第1条参照)
1) 生物多様性の保全
地球上の多用な生物やその生息地の保全、悪影響を及ぼす外来種の導入防止など。
2) 生物多様性の構成要素の持続可能な利用
生物資源(生態系サービス※1)を持続可能であるように利用すること。
(生きものは、医薬品や食料、燃料などの資源として利用されていますが、その資源が過度に利用
されたり、森林の伐採等により生育地・生息地が破壊されれば、生きものが失われ、生物多様性が
持続できなくなってしまいます。)
3) 遺伝資源※2の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分
遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分すること(例えば、ある国に生育する植物の
遺伝資源を先進国が利用して得た利益が、提供者にも衡平に配分されるようにする。)
※1:生態系サービスとは
人類が生態系から得ている利益。淡水・食料・燃料などの供給サービス、気候・大気成分・
生物数などの調整サービス、精神的充足やレクリエーション機会の提供などの文化的サービス、
酸素の生成・土壌形成・栄養や水の循環などの基盤サービスがある。
生態系サービスは
生物多様性によって支えられている。(生態系サービスが無くなれば人類は滅亡する。)
※2:遺伝資源とは(植物遺伝資源、動物遺伝資源)
遺伝の機能を備えた生物由来の素材。医薬品・食品・材料・エネルギー・環境など幅広い
分野で研究・産業に利用される。広義には、遺伝子を持った動植物全般を意味するが、狭義には
動植物の原種(在来種)の保存に関する遺伝子の意味もある。
すなわち生物多様性のためには、原種(在来種)が絶滅しないようにする必要がある。
備考)
1)「リオ+10」
2002年8月26日から9月4日まで、南アフリカ・ヨハネスブルグで「持続可能な開発に
関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)」が開催された。
テーマは「経済発展・社会開発・環境保全」
(1)「実施計画」と(2)「ヨハネスブルグ宣言」が採択。
「アジェンダ21」が採択された1992年の国連環境開発会議から10年が経過したのを機に、
同計画の実施促進やその後に生じた課題当についてハイレベルで議論することをことを
目的に企画されたもので、
「リオ+10」とも言われている。
2)「リオ+20」
2012年6月20日〜22日までの3日間、リオデジャネイロ(ブラジル)において、
「国連持続可能な開発会議
(リオ+20)」が開催された。(20年目のフォローアップ)
テーマは、(1)「持続可能な開発及び貧困根絶の文脈におけるグリーン経済」及び
(2)「持続可能な開発のための制度的枠組み」6章構成で約280項目(53ページ)から成る
「我々が望む未来」と題した宣言を採択。
1、2章はこれまでの行動の再確認、3章はグリーンエコノミー、4章は新い制度的枠組み、
5章はテーマ別行動、6章は実施手段について書かれている。
【参考資料】
・【環境管理テーマ】/
環境保全活動の意義について
【参考になるサイト】
・
環境省/外交政策/地球環境/国連持続可能な開発会議(リオ+20)
・
福井県環境情報総合処理システム/アジェンダ 21行動計画(日本政府)
・
外務省/生物多様性条約のページ
【書籍紹介】
生物多様性とは何か(岩波新書):井田徹治 著
クロマグロの大量消費は何が問題なのか?
人類を養う絶妙な生物ネットワークの破壊が進んでおり、
生物多様性条約もその歯止めになっていない。
今なすべきことは何なのか。世界のホットスポットの現状と、
保全のための新しい仕組みをレポートし、
人間と自然との関係修復を訴える。