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HOME【やさしい法令解説】法令の種類について

 法令(法律)関係について、分かりやすく解説しています。

§法令の種類について 2015年4月26日青字追加

 法令(法律)は「なぜややこしい」のでしょうか。条文を解釈する前に、まずは法令の種類や
その制定機関、優先順位等を把握していると、理解しやすくなります。「法令の種類」や基本的な
約束などについて簡単にまとめてみました。

  表1.法令の種類について(表の上から下に向かって形式的効力が弱くなっていく。)
憲法国家の基本秩序を定める根本規範。統治体制、権利義務などを定めている。
条約国際法上で国家間(国際連合等の国際機関も締結主体となり得る)で結ばれる成文法であり、日本国が同意しているものは公布され、国内では法律より優先する。
法律国会の議決(衆・参両議院で可決)を経て制定される。(憲法、条約につぐ効力を持つ国法)



行政機関が定める法。原則として命令の中では、政令が上位にあり、他の命令は相互に対等である。
政令憲法及び法律の規定を実施するために、内閣が閣議決定で制定する命令(〜法施行令)
政令には、特にその法律の委任がある場合を除いて、罰則を設けることはできない。
府令内閣総理大臣が主任の行政事務について、発する命令(〜を定める内閣府令)
省令その法律を主管する省庁の大臣が定めて発する命令(〜法施行規則)
規則府省の外局である庁の長、同じく府省の外局である行政委員会、人事院、会計検査院が定める命令
国家公安委員会規則、人事院規則、会計検査院規則など、名前は「規則」だが、命令の一種。
庁令省の外局である庁の長が発する命令。現在は、海上保安庁令のみ。海上保安庁令は、海上保安庁法に基づき、海上保安庁長官が発する命令である。





条例地方自治体の議会の決議を経て制定される。(当該地方公共団体内でのみ適用)
条例は法令の範囲内で制定されるが、「上乗せ条例(規制)」、「横だし条例(規制)」などがある。
規則地方公共団体の長の発する命令(主として手続関係を定める) 議会の決議を必要としない。
要綱議会の議決なく役所の立場で決めたもの(強制力なし)
一般に行政指導といわれるもの(〜の手引、〜規定、〜要領、〜基準など)
例規議会の議決なく役所の立場で決めたもの(法の解釈や運用を定めている)
法の運用基準(自治体等における、条例や規則等の総称であり、「例規集」と表現する。)
以下は法令ではないが参照されるもの。(しばしば法令の解釈の参考にされる。)
閣議決定全大臣合意のもと決定される政府全体の合意事項。(内閣の最高意思決定)
法律・条約の公布、政令の決定など。
告示国の機関が法律の必要事項を一般に知らせる。命令も含まれる。官報に登載される。
(〜に関する基準、〜の規定に基づく区域、国土交通省告示など)
訓令行政機関およびその職員を対象として定められる命令。各省大臣、各委員会及び各庁の長官が、その機関の所掌事務について命令するため、所管の諸機関及び職員に対し発するもの。
(非公表扱いのものがある。)
通達国の機関が地方自治体に命令又は示達する形式の1つで、法令の解釈、運用や行政執行の方針などに関するものが多い。実務の担当者にとっては参考になる資料である。
(〜法の運用に伴う留意事項について)
協定公害防止協定など2つ以上の当事者間の取り決め。地方自治体と事業所などが結ぶ。
覚書・念書・協議書等が該当する。

<法令(用語)の基礎知識>
【法令の優先順位】
 ・法令の形式的効力は強い順に【憲法→法律→政令・府令→省令→規則・庁令】
 ・特別法は一般法に優先する
 ・新法は旧法に優先する
 ・旧法が新法の特別法になっている場合は、例外的に旧法が優先する
 ・法令は、将来に向かって適用するのが原則(特に刑罰法規)
  これを法律の不遡及というが、消防設備などでは、既に設置済みの設備にも適用(遡及)
  される場合がある。

【公布(こうふ)】
 国民または住民が法令の内容を知りうる状態にすることをいう。

【法律の施行(しこう)】
  一般的に国民への周知という観点から一定の期間を置くことが望ましいと考えられています。
 (1)当該法律の附則で確定日として施行期日を定めるもの、(2)他の法令にその定めを委ねるもの
 とがあります。(2)は「この法律は、公布の日から起算して○月(○年)を超えない範囲内において
 政令で定める日から施行する。」という形で委任されます。

【基本法】
  国の政策(特定の行政分野)における基本方針(理念)を示すために制定される法律であり、
 具体的な規制値は盛り込まれない。また、罰則規定などは「基本法」には一切ない。
  個別の政策実現のために、国民の権利・利益に関わる事項について具体的に規定するのが
 「個別法」であり、「基本法」はその「個別法」が伴わないと具体的な意味をなさない。

【上乗せ条例、横だし条例】
  地方自治体は「法令の範囲内」において、法律の規定より厳しい規制(上乗せ条例)を設けたり、
 法律の規制対象外のものを規制(横出し条例)したりすることができる。
 備考)「法令の範囲内」の解釈について
    規制値を法令より厳しくするのは「範囲内」とはいえないのでは?という議論があるが、
    例えば環境法令などの規制値は全国一律の最低基準が示されていることが多く、「法律」
    と「条例」を比較して、制定された「趣旨・目的・内容・効果」が矛盾するのでなければ、
    これらの「上乗せ条例」「横出し条例」も認められるとされています。(判例より)
    すなわち地域の事情を加味して、上乗せ・横出し規制が地域にとって有効とするなら
    認められるということです。

【国際条約についての用語】
 ・条約
   国際法上で国家間(国際連合等の国際機関も締結主体となり得る)で結ばれる成文法であり、
  日本国が同意しているものは公布され、国内では憲法に次ぐ効力があり、法律より優先する。
  条約の内容は署名によって確定し、以後、正式な手続による場合以外は内容を修正することはできない。

 ・議定書
   国家間の正式の合意文書。一般的には、成立した条約を修正または補完する取決めとして用いられる。
  例えば、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づいて、より具体的な規制を盛り込んだ
  「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択された。

 ・採択
   多国間条約などの国際会議の出席者が、その条約に関する決議に賛成し、その組織体として
  「この条約を各国に呼びかけよう」と決めることです。

 ・発効
   条約の内容が実際に行使されること。(効力が発生すること。) 条約には「発効要件として、
  例えば50ヵ国以上の批准が必要」などの条件項目があります。

 ・署名
   条約の内容が確定したときに、全権を委任された国家の代表者(通常は代表団の首席代表)が条約の
  内容を公式に確認した証拠として記名することを指す。(二国間条約)
   国家が条約を締結する際の手続として行われる場合は、国家が条約に拘束される意思を表明する署名と
  なるが、このようないきなりの署名はほとんどない。

 ・批准(ひじゅん)
   批准は、署名をした条約の内容について国家が最終確認を行い、条約に拘束されることについて同意を
  与えることを指す。多数国間条約の場合は会議開催地国の政府あるいは国際機関(寄託者)に批准書を
  寄託することで効力が発生する。受諾(じゅだく)も批准と同様な意味合いがある。

 ・加入(かにゅう)
   加入は、条約に署名をしていない場合に、条約の規定に拘束される意思があることを正式に宣言する行為。
  具体的には、国会あるいは議会の承認を得る等の所定の国内手続により条約に拘束されることに同意する
  ことの確認を行い、加入書を作成し、会議開催地国の政府あるいは国際機関に加入書を寄託することで確定
  される。
   署名のために開放される期間が終了した後に条約を締結する場合には条約に署名することはできないので、
  必然的に批准等ではなく加入等の手続を取ることになる。

 ・枠組条約
   枠組条約は、基本的な構成と意志決定メカニズムのみを定めた条約で、具体的な内容は議定書等で
  展開される。

 ・多国間条約の発効
   多数国間で結ばれる条約の場合、条約が発効する要件として、批准書・加入書等を寄託した国が一定数に
  達する等の所定の条件を満たしたときに初めて締約国に対して効力を生ずるのが通例である。
  条約発効の要件は条約の規定中に記載されている。

 ・締約国会議 (COP:Conference of the Parties)
   締約国会議は条約の実施等に関する意思決定(最終決定)を行う会議。
  気候変動枠組条約(COP-FCCC)、生物多様性条約(COP-CBD)、砂漠化対処条約(COP-CCD)など、
  条約ごとに設けられる。概ね2年に1度開催されるが、条約ごとに決められている。

  参)議定書の締約国会合は、MOP(Meeting of the Parties)と略称される。
   議定書が発効された後、議定書に関することを審議するための会合である。
   COP(締約国会議)の一部として同時に開催されることが多い。(効率重視)この場合は、
   正式には「締約国会合として機能する締約国会議」といい、COP/MOPと表記される。


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