1.PCB廃棄物特別措置法の概要(詳細は、
法律条文をご確認下さい。)
PCB廃棄物については、従来から、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」
において適正保管等の規制がなされていました。さらに、平成13年6月22日には、処分等をより確実
かつ適正に推進するために、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
(PCB廃棄物特別措置法)」が公布され、同7月15日に施行されました。PCB廃棄物特別措置法の主な
内容は以下のとおりです。(違反に対する罰則有)
・PCB廃棄物保管事業者に対して、一定期間内(平成
28年7月14日 39年3月31日まで)に処分する
ことを義務付け
・PCB廃棄物保管事業者に対して、保管状況等の毎年度(6月30日まで)の届け出を義務化
・地方公共団体に譲渡す場合を除き、PCB廃棄物の譲渡し、又は譲受けの禁止
・国はPCB廃棄物処理基本計画を策定、都道府県は国の基本計画に則してPCB廃棄物処理計画を策定
・PCB製造者に対して、国及び地方公共団体が実施する施策への協力義務
2.PCB廃棄物の処理事業について(最新の詳細情報は、
JESCOのホームページ を参照のこと。)
旧環境事業団(特殊法人)の実施していたPCB廃棄物処理事業を継承して設立された政府全額出資の
特殊会社である日本環境安全事業株式会社(JESCO)が、引き続き国の指導・監督及び施設設備補助金等の
支援を受けてPCB廃棄物広域処理事業を実施しています。たとえばPCB廃棄物を大量に保管している電力会社
などの一部の事 業者は、自社内に処理施設を設け、PCB廃棄物を処理している場合があります。しかし、
外部からの委託によるPCB廃棄物を処理する許可は得ていません。(まだ民間の受託処理業者はない。)
JESCOは全国5箇所にPCB廃棄物処理施設を設置し、保管事業者から委託を受けて処理を行なっています。
北九州事業をはじめ、豊田事業、東京事業、大阪事業、北海道事業の5つの事業を実施しています。なお、
それぞれの事業の対象地域は国の定めるPCB廃棄物処理基本計画に従い 表(1) のように決められています。
現時点で照明用安定器の処理ができるのは、北九州事業区域だけです。北九州事業での安定器の
処理料金は、29,400[円/kg](税込)×(1缶当たりのPCB汚染物等の総重量+容器重量)[kg]
となっています。指定容器に入れて搬入した場合は、1缶当たりの処理料金から指定容器割引(588,000円)
があります。また、中小企業者に対しは、処理料金の70%を補助する制度もあります。(詳しくはJESCOの
ホームページによる。)北九州事業区域以外の場所については現在、環境省で処理体制について検討中です。
注)微量PCB廃棄物については、処理(登録)の対象外です。JESCO以外での無害化処理認定施設での処理が
平成21年11月より可能になっています。ただし、認定業者はまだ数えるほどしかない。(2011/6現在で4社)
(微量PCBとは、数ppm〜数十ppmのものをいう。)
表(1).各事業の対象エリア、対象物 (2011年6月現在)
| 事 業 | 北九州 (第1期) | 北九州 (第2期) | 大阪 | 豊田 | 東京 | 北海道 |
実施場所 | 北九州市 | 大阪市 | 豊田市 | 東京都江東区 | 北海道室蘭市 |
事業対象地域 | 中国地方、四国地方、 九州地方、沖縄 (17県) | 近畿地方 (2府4県) | 東海地方 (4県) | 埼玉、千葉、東京、神奈川 (1都3県) | 北海道、東北地方、信越・北陸地方、および茨城、栃木、群馬、山梨 (1道15県) |
処 理 対 象 物 ※1 | 高圧トランス等※2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
PCB油等※3 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
安定器等※4 | | ○※7 | | | ○ | |
PCB汚染物質等※5 | | ○※7 | | | | |
柱上トランス※6 | | | | | ○ | |
PCB分解量 | 1.5トン/日 | 2トン/日 | 1.6トン/日 | 2トン/日 | 1.8トン/日 |
処理の開始時期 | 2004/12月 | 2009/8月 | 2006/10月 | 2005/9月 | 2005/11月 | 2008/5月 |
※1:受入可能な対象物の最大寸法・重量などが、各施設により異なります。(詳細は各施設の受入基準による。)
※2:PCBを使用した高圧トランス、高圧コンデンサ並びにこれらと類似した構造を有する電気機器
※3:廃PCB、廃PCBを含む廃油
※4:PCBを使用した安定器及び10kg未満の小型電気機器(東京事業に係る安定器等の受入は、現在停止中。)
※5:感圧複写紙、ウエス、汚泥等
※6:東京電力の東京都内分のみ
※7:溶融分解方式の処理対象物
3.日本環境安全事業株式会社(JESCO)でのPCB処理について
一般的に、トランス油のPCB濃度は60%、コンデンサ油のPCB濃度は100%となっています。
JESCOでは高濃度PCB廃棄物(濃度50%以上のもの)を処理の対象としている。それ以下の
低濃度PCB廃棄物(概ね100ppm(0.01%)以上50%未満)の処理は後回しとなっている。
(高濃度PCB廃棄物を優先的に処理している。)
微量PCB廃棄物(数ppm〜数十ppm)は、JESCO以外の無害化処理認定施設での処理となる。
備考)0.5mg/kg以下(0.5ppm以下)の場合は、PCB廃棄物(特別管理産業廃棄物)に該当しません。
PCB特別措置法の対象外になり、通常の産業廃棄物として処分することができます。
4.JESCOでの処理期限及び事業予定
1) 処理委託の申込期限→遅くとも平成26年(2014年)12月まで(3月までという資料もある。)
2) 受託処理期限→平成27年(2015年)3月末
3) 事業完了→平成28年(2016年)3月末
4) 法律上の処理期限→平成28年(2016年)7月14日
現在、PCBを使用した安定器及び10kg未満の小型電気機器については、北九州事業でしか処理できない。
近畿地方(2府4県)は大阪事業区域であり、古い工場が多い地域だけに、PCB入安定器を保管している
会社はかなり多いはずです。(大阪事業区域は北九州事業区域の1.5倍はあると思う。)
法律上の処理期限が平成28年(2016年)7月14日となっていますが、本当に処理出来るのか不安です。
また、1,000本以上保管している場合は、1本3kgとして処理費用は8,800万円(税込)程度になり、
中小企業以外でも経営を揺るがす額になります。(ただし、北九州事業と同額で試算した場合。)
・
JESCO/PCB廃棄物の処理料金表.pdf(790KB)
JESCOによるPCB処理については、高濃度PCB廃棄物(濃度50%以上)のトランス油とコンデンサ油を
優先して処理していて、低濃度PCB廃棄物や小型安定器(照明用安定器)が後回しになっているのは、
明らかです。(各事業所の月間処理実績を見ても明らかである。)
P.S.
ちなみに、
POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)での加盟国の義務は、
PCB含有機器については、2025年までに使用の廃絶、2028年までに廃液、機器の処理
(努力義務)となっています。
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